第4話:全内定辞退と、私の「余計な一言」
現在、私の息子は出版・エンタメ系のアルバイトに精を出しながら、自らの手で学費を捻出しています。将来的にもその道に進みたいという希望を持っているようですが、実は今回の就職活動において、当初はその業界へ進むつもりは微塵もありませんでした。
先日、彼は本命を含めた全社の内定を辞退するという、親から見れば正気の沙汰とは思えない決断を下しました。その背後には、彼なりの深い葛藤と、そして私の「余計な一言」があったのです。
「やりたいこと」と「将来性」の狭間で揺れる背中
息子が第一志望に据えていたのは、エンタメ業界ではなく、将来的な「伸びしろ」が高いとされる堅実な建築系の企業でした。 しかし、いざ内定という「切符」を手にした瞬間、彼は気づいてしまったのです。
「ここに入ってしまえば、もう二度と自分の本当にやりたかった表現の世界には戻れない。きっと一生、後悔することになる」
親としての本音を言えば、「だったらなぜ、もっと早い段階で手を打たなかったのか?」と問い詰めたいところでした。ですが、それを口にしたところで現状が好転するわけではありません。私はあえて批判的な言葉を飲み込み、彼の迷いを聞き続ける「観客」に徹することに決めたのです。
母親が知らなかった、息子の「本物の実績」
以前、息子がバイト先から頻繁に豪華な菓子折りを持ち帰ってくる時期がありました。 当時の私は、「お店が何か賞を獲って、そのおこぼれを貰ってきただけでしょう」と高を括っていたのです。
しかし、真実は違いました。彼はバイトの傍ら、個人の実力で「ディスプレイ大賞」や「本屋大賞」に関連する名誉ある賞を、何度も受賞していたらしいのです。 世間的に見れば「そこそこ凄い」どころか、その道のプロが認める実績であったと知ったのは、事態が大きく動き出した後のことでした。私の無知と偏見が、彼の才能を家庭内では「透明なもの」にしていた事実に、私は今さらながら戦慄しています。

私が彼の心に残した、消えない「棘(とげ)」です
こうしたバイト先での意外な評価を知ってしまったからこそ、私はつい、あの言葉を漏らしてしまったのです。 「本当に、その内定でいいの?」
この何気ない、けれど重い一言が、彼の中に「棘」として深く突き刺さってしまったのかもしれません。まさか、そこから全社内定辞退、そしてキャリアをリセットするための「計画留年」という、波乱の延長戦にまで至るとは予想だにしていませんでした。
今回の計画変更、その引き金を引いたのは間違いなく私です。
ですが、勘違いしないでいただきたい。私の言葉で道を変えたからといって、私が学費まで肩代わりするような甘い「サポート」をするつもりは1円もありません。自分の決断に責任を持つ。それが、この家で生きるための最低限のルールだからです。
1年後、今のこの無謀とも思える決断が「吉」と出るか「凶」と出るか。それは彼自身の「努力」次第です。
「内定を捨てた責任、きっちり自分の努力で証明しなさい。私はただ、最前列でそれを見ててあげるわよ( ´∀`)ハハハ」
そんな不敵なスタンスで、2026年の荒波を再び漕ぎ出していくのでした。
子供の就活に関わりすぎたと後悔している親御さん、逆に関われなかったと悩んでいる親御さん、どちらもきっと同じくらい子供のことを考えているはずです。答えのない問いを、一緒に抱えていきましょう。



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