べっちゃんの四十九日に、特大のプレゼント
健康診断のわずか2日後。私は「コロナ陽性」という、誰も望まない戦績をあっさりと叩き出しました。
発症したのは、よりによって愛犬Bellの四十九日。空の上のべっちゃんが、何か仕掛けてきたとしか思えません。「べっちゃん、虹の橋を渡っても強烈な爪跡残してくれるわ……」と、遠い目をせずにはいられませんでした。
検査キットの陽性ラインを見つめながら、思わず苦笑いが出ました。泣くに泣けない、笑うに笑えない。この感情は何と呼べばいいのでしょう。愛犬を見送ったばかりの心に、コロナという名の追い打ち。べっちゃんとの日々を静かに噛み締めるつもりだった四十九日が、まさかこんな形で記憶に刻まれるとは
最初の3日と、その後の「本当の地獄」
発症直後はドンと体温が上がり、「ああ、これが噂のコロナか」と妙に冷静に受け止めていました。幸いにも熱自体は3日ほどで引いてくれましたが、問題はその後です。
喉にカミソリをそのまま詰め込んだような激痛が続き、鳴り止まない耳鳴りが頭の中を占領しました。食事も満足に喉を通らず、唾を飲み込むたびに顔をしかめる日々。「1週間の自宅待機、ちょっとラッキーな休暇じゃない?」などと内心浮かれていた最初の自分を、全力で殴り飛ばしたい気分でした。
コロナを「ただの風邪」と軽く見ていたわけではありませんが、実際に経験すると、その侮れなさを全身で思い知らされます。体が鉛のように重く、ベッドから起き上がる気力すら湧いてこない。仕事のことも、ブログのことも、何もかもが遠のいていく感覚。あの1週間は、時間の感覚がごっそり抜け落ちたような、不思議な空白でした。
逃げ場なし。通勤という名の賭け
一体、どこでもらってきたのか。
医療事務として外来窓口に立ち、毎日患者さんと向き合い、往復3時間の満員電車とバスに揺られる日々。マスクの着用はもちろん、手洗いの徹底、持ち物すべての消毒……コロナ禍から続けてきた防御を今も手放さずにいますが、それでも移る時は移るのです。
「換気されています」というアナウンスが流れる車内で、見知らぬ誰かと肩が触れるほどの距離で揺られる時間は、まさに「運任せ」そのものです。今回は、たまたま私のところで引き金が引かれた。ただ、それだけのことでした。
医療の現場で働く以上、感染リスクはゼロにはなりません。患者さんと接することが仕事である以上、防御には限界があります。満員電車に乗らなければ職場に辿り着けない以上、このギャンブルからは降りられない。それが、私の選んだ「踏み台」の現実です。
「移らないように」と祈りながら乗り込む電車。「今日も無事だった」と胸を撫でおろす帰り道。そんな日常が、気づけば当たり前になっていました。リスクと共存しながら、それでも前を向いて走り続けるしかない。45歳の社会復帰とは、そういうものなのかもしれません。
隔離部屋で気づいた、三食おやつ付きの「光」

物理的に家族から隔離された1週間。いつもの自分の部屋なのに出られない、その地味なおかしさに最初は苦笑いしていましたが、皮肉なことに、この「強制休養」があったからこそ、ブログデビューという新たな一歩を踏み出すことができました。
時間だけはたっぷりある。動く気力もない。そんな状況で、ぼんやりとした頭で考え続けた末に、「そうだ、ブログを書こう」という結論に辿り着いたのです。体は悲鳴を上げていましたが、指先だけは動かせました。普段過ごし慣れた自室が、思いがけずこのブログの産室になったと思うと、何だか不思議な縁を感じます。
そして何より、改めて気づかされたのは家族のありがたみでした。自分では指一本動かさずとも、三食にプラスしておやつまで届けてくれる。ドア越しに「食べられそうなもの、何かある?」と声をかけてくれる母の気遣い。ボヤけた視界で、温かい食事を前にするたびに、胸にじんわりと染み込むものがありました。
「作ってもらうご飯って、なんでこんなに美味しいんだろう……」
普段は気恥ずかしくて言葉にできない感謝が、弱った体にはするりと素直に出てきます。強がってばかりの私が、あの1週間だけは、誰かに甘えることをそっと許した気がしました。
この綱渡りで得た、唯一の「勝ち」
幸いにも、家族の誰にも感染させずに済みました。それだけが、今回の綱渡りにおける唯一の「勝ち」だったと思っています。
自分が苦しむのはまだいい。けれど、高齢の母や、同居している家族に移してしまったら。その不安だけが、隔離中ずっと頭の片隅に居座り続けていました。だから、全員が無事だったと分かった時の安堵感は、熱が下がった時よりも大きかったかもしれません。
コロナは完全には終わっていません。満員電車も、外来窓口も、リスクはこれからも続きます。それでも私は今日も電車に乗り、窓口に立ち、往復3時間をかけて「踏み台」を踏み締めます。
止まったら死ぬ。サメのように、泳ぎ続けるだけです。
「べっちゃん、四十九日のプレゼントはもう十分いただきました。次はもう少し、穏やかなやつをお願いします( ´∀`)ハハハ



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