高級ホテルのような「異世界」へ
先日、私は「雇入時健康診断」に行ってきました。 現在、私が働いている場所も指定病院ではあるのですが、あえて駅前の再開発で誕生したばかりの、最新の健診センターを予約してみました。同僚に自分の数値を隅々まで検閲されるなんて、何のメリットもありませんから。
しかし、一歩足を踏み入れた瞬間、私は自分の選択を少しだけ後悔することになりました。そこは、私の知っている「病院」という場所とは、何もかもが違う「異世界」だったからです。
病院というより、もはや「高級ホテル」
「……え、ここ、本当に入り口? 高級ホテルだよね?」 思わず、入り口で立ち止まりそうになりました。スタッフの丁寧すぎる所作、落ち着いたトーンの制服、そして洗練された内装。そこには、私が普段接しているような「生活感」も「無駄な騒音」も微塵も存在しません。
一番驚いたのは、そこから「紙」という前時代的な遺物が1枚も存在しないことでした。受付で渡されたのは、薄い1台のタブレットです。「入力はこちらで。あとは画面の指示に従ってください」という、それだけで、すべてが動き出すのです。

効率化という名の「無機質な沈黙」が漂っています
何より違和感を覚えたのは、その空間における「音」と「匂い」の欠如でした。 私の職場には、常に不快な「音」が溢れています。鳴り止まない電話のベル、バタバタと廊下を走る足音、そして「面倒くさいことを言うお年寄り」の、生産性のない愚痴。「愛おしく思えるようなほっこりした気持ちにしてくれるお年寄り」。空気には、あの独特の消毒液の匂いと、生活の垢が混ざったような、泥臭いリアリティが漂っています。
ただ、この異世界に溢れる「完璧な効率」もまた、別の意味で息が詰まるものでした。
漂っているのは微かなアロマの香りと、空調の微かな音だけです。待合室では、誰もが静かに自分専用の画面を見つめています。そこには、面倒くさい年寄りもいなければ、愛おしく思えるようなお年寄りも一人もいません。効率化というフィルターを通った後の、無機質な「個体」が並んでいるだけなのです。
会話もなく、目も合わず、タブレットにエスコートされるままに検査ラインを流れていく。それは確かにスマートで快適ですが、同時に、人間が単なる「処理されるデータ」に成り下がったような、底冷えする静寂でした。
現実という名の「巣穴」を眺めて、思うこと
タブレットを手に取り、画面が「次はこちらへ」とスムーズに導いてくれるたび、私は自分の職場を振り返ってしまいました。 ……天と地。タイムスリップしたのかとさえ思う格差です。 「同じ働く医療機関なら、こっちが良かった……。駅近だし、綺麗だし、何よりスムーズだし」 そんな、当たり前の「利害」が頭をよぎります。新しくて、綺麗で、すべてが効率的。それが一番いいに決まっています。
でも、ふと気づくのです。 「私なんかはお呼びじゃないんでしょうね( ´∀`)ハハハ」
この「効率化」の結晶のような空間で、隙なく完璧に立ち振る舞うスタッフたち。それに対して、紙のカルテや伝票と格闘し、泥臭い人間模様の中にいる自分。 私は、あのスマートな住人にはなれませんし、かといって今の職場の泥臭さを愛せるほどおめでたくもありません。どちらの「極端」にも居場所がないという現実を、私はその異世界で突きつけられることになりました。
どちらの世界も、私の居場所ではありません
「効率化」という光り輝く世界を眩しく眺めながら、私は自分の巣穴へと戻っていきます。 あんな風に機械的にはなれないけれど、今の場所の非効率さに馴染むつもりもありません。 私はただ、そのどちらにも属さない場所で、自分だけの「正義」と「猛毒」を抱えて生きていくしかないのでしょう。
タブレットを返却し、駅前の再開発エリアを後にしました。 次はどこでおいしい物でも食べて、この「異世界」と「現実」の両方の不快感を、綺麗さっぱり洗い流そうかしら、なんて思っています( ´∀`)ハハハ



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