バカの振りは、時として最高の慈悲である
「マリンハッタン」の余韻が冷めぬうちに、新たな事件が勃発した
マリンハッタン事件…。
あの衝撃は受付という特等席に座る私の中で静かに熟成され、ブログという名の収穫物となりました。読んでいただけましたか。あの記事です。事務長がNYの地名をマリンとハッタンで独自に合体させ、ドヤ顔で連呼していたという、令和の奇跡のような出来事の記録です。
ところが魔窟というのは、ネタを一つ提供したくらいでは満足しないようです。
間髪入れず、次の事件が降ってきました。
今度のテーマは「PC」です。
「ここのDeleteキーを押せば消えます」
ある日、職場の方が私にパソコンの操作を教えてくださいました。善意で、親切心で、丁寧に。
「ここのDeleteキーを押せば、消えるんで」
私は画面を見つめたまま、静止しました。
心の中で何かがゆっくりと、でも確実に崩れ落ちる音がしました。
私が持っているのは、MOS エキスパートです。Microsoftが認定する、PCスキルの上位資格です。
その私に向かって、Deleteキーの説明。
極端に言えば、F1レーサーに「ここを踏むと加速しますよ」とアクセルペダルを説明するようなものです。受付で笑いを堪えるのが、もはや「高負荷の筋トレ」になってきました。マリンハッタン以来、この筋トレの頻度が明らかに上がっています。体幹が鍛えられています笑。

知らないことは罪ではない、でも「認識の次元」が違いすぎると奇妙なことが起きる
笑いを堪えながら、私はふと妙な感覚に陥りました。
「私が悪いことをしているみたいだ」
これは何だろうと考えてみると、「知性の暴力を無意識に振るっているような罪悪感」に近い感覚でした。相手は善意で教えてくれている。私はそれを知っていながら「ありがとうございます」と受け取っている。この構図が、なんだか騙しているような気分にさせるのです。
でも冷静に考えれば、私が悪いのではありません。ただ「認識の次元」が違いすぎて、コミュニケーションそのものが成立していないだけです。
エキスパート相手にDeleteキーを教えるその純粋すぎる無知は、もはや「子犬の失敗」を見守るような心境にさせてしまいます。怒れない。ただただ、見守るしかない。
「バカの振り」は、高度な福祉活動である
ここで私は一つの結論に辿り着きました。
「バカの振りは慈悲である」
もし私が「私、MOSエキスパート持ってますけど」と正論を叩きつけたら、Deleteキーを教えてくださった方の善意は粉々に砕け散ります。マリンハッタンを連呼していた事務長の自尊心も、同様に崩壊するでしょう。
ぬるま湯の中で幸せに暮らしている茹でガエルを、わざわざ揺り起こす必要はない。教えさせてあげることは、相手のプライドを守るための「高度な福祉活動」だと思えば、この奇妙な罪悪感も少しは昇華されます笑。
ちなみに資格を持っていることは派遣会社には伝えてあり、職場側も知っているはずです。でも期待していないということでしょう。派遣=下という固定観念が、客観的な情報よりも優先されている。これは組織における「確証バイアス」の典型例です。自分たちに都合の良い情報しか信じないからこそ、目の前の超絶タイピングを「見なかったこと」にするという論理破綻が起きるのです。
バチバチ打っていたら、静止した
先日、非常に忙しい日がありました。
業務が立て込み、私は無心でキーボードをバチバチと打ち続けていました。その様子を見ていた職場の方が、見事に静止していました。Deleteキーを教えてくれたあの方です。
ツッコミを入れてくれればいいのに、見て見ぬふりです。
「見て見ぬふり」はまさに、茹でガエルのフリーズ状態です笑。論理的に考えれば、自分の教えが「原始人に火の使い方を教える現代人」レベルだったと気づいて、気まずさで言葉を失ったのでしょう。認めてしまったら「マリンハッタン」な優越感が崩れてしまうから、見なかったことにするしかなかった。
その心境、何となく分かる気もするので、そっとしておきました。

異世界召喚されたのかと、改めて思う
私自身、MOSは持っていても長らく活用する機会がなかったのは事実です。7年のブランクもある。偉そうなことを言える立場ではありません。
でも、さすがにDeleteキーくらいは知っています笑。
同じ国にいながら、異世界に召喚されたような感覚。言葉は通じているのに、認識の次元が違いすぎて、会話が微妙に噛み合わない。魔窟とはそういう場所なのかもしれません。
自分たちは善意の集団だという確信が、また別の意味で痛い。見方を変えれば、こんなに豊富なネタを無償で提供してくれる職場は、ある意味ありがたい存在です。
職場でのスキルのギャップは、どんな業種でも起こりえます。大切なのは相手を責めるのではなく、自分自身が常に学び続けること。「バカの振りは慈悲である」と笑いに変えられる余裕が、長く働き続けるための秘訣かもしれません。
心の中でツッコミを入れながら、今日も私は受付の椅子に座り、百貨店仕込みの笑顔を装備して、次のネタを静かに待ちます。
踏み台よ、今日もありがとう(´∀`)ハハハ


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